過去の自分との対話  前屈という動作は、日常のどの動きにも深く関わっています。私達は何かを拾う動作をする時には、たとえ体を反らして(後ろの)何かを拾うことが出来ても(一度ターンをして)いつも前かがみになって何かを拾ったり、職場、自宅、映画館やどこでも、椅子に座る姿勢も前かがみでしょう。日常生活では前かがみ になる動作の時はほとんど無意識ですが、ヨガのアーサナとして前屈する時には自分自身のハムストリングスやお尻の筋肉の堅さや、腰の下部の神経過敏、一見 突発的に湧き上がってくる恐怖、怒り、悲しみなどの感情に気づきます。多くの生徒達は前屈系のアーサナは困難なものとして扱い、身体の背面を伸ばすこと から起こるこれらの肉体的、精神的不快を最小限にする為に前屈系のアーサナを避けようとします。 

 前屈系アーサナは過去の自分と向き合う作業です。関節、筋肉、臓器、そして身体の他の組織に長い間をかけて影響を及ぼしてきた根深い潜在意識における問題 を浄化する機会を与えてくれているのです。前屈系アーサナは仙骨、骨盤、股関節、そして鼠径部(そけいぶ)辺りに位置するスワディシュターナチャクラ(第 2のチャクラ)を活性化します。スワディスターナチャクラは、創造力と性的能力に呼応し、自分達と子供達との関係性に、ロマンティックな性的に生産性の ある相手との関わりあいやビジネスのパートナーとの関わりに関連してきます。 前屈系アーサナを練習することにより、我々の生活において関わってきた人々 や出来事によって生まれた過去のカルマと度々向き合うことになります。これらのカルマが原因となり、我々の創造力や性的能力を表現することから遠ざける ような感情的執着や、それによる恐れを身体と精神に帰依していきます。前屈系アーサナを行っている間に湧き上がる感覚と感情を良い悪いの判断なしに、それを否定したりそれから遠ざかったりすることなしに意識することによって自分と相手との関係を再構築し、過去のカルマへの執着から解放されて、第2の チャクラは浄化されます。

 前屈系アーサナはフィジカル的(身体的)にも大変よいのです。お腹辺りの腹圧により分泌線や内臓器官の調子を整え、消化を促進させ整理痛を和らげます。こ れらのアーサナは、ハムストリングスを含む背後の筋肉を解放させることで、股関節を屈曲させる(コアマッスル)ことや身体全体の前面の筋肉を強くし整えま す。 多くの人々が何度も太陽礼拝をすることより身体を前屈して数分間じっとしていることの方が苦しいと感じます。これは肉体的な稼動域の限界かもしれ ませんが、また、前屈をするという状態が謙虚にあるということであり、身を委ね手放していくということを表しているからでもあります。 継続的な前屈系 アーサナの練習は謙虚さ、忍耐力、持久力、そして集中力を高めるのに役立つでしょう。

 坐った状態の前屈ではウッタナーサナにおいては足全体だけに作用していたのが、パスチモッタナーサナにおいての脚の裏側とお尻に作用するという点で異な るでしょう。すべての前屈系アーサナの好ましいアライメントとしての1つの重要な要素として、足、脚、そして胸が無意識であってはならないということで す。足首が曲がっていたり、指先が伸びていたりしていても、足に気が配られていて安定している状態です。多くの前屈において、脚の後ろ側が伸びてい るときはモモは引き締められています。胸辺りはくぼんだ状態であったり、閉じた状態であってはいけません。肩甲骨は背中の方へ引き下がっているべきで す。アーサナにおいての動きはたいてい、吸う準備呼吸と共に胸の中心から始めます。一般的には前屈系アーサナは吐く呼吸で深められていき、吸う呼吸で 再編成と再活性します。

 あなたが前屈にあるときに否定的な思考から解放され、心が至福で満たされ、周りの者への寛大さで包まれるのであれば、怒り、非難、恨みなどの感情を手放せ 始めているといえるでしょう。練習を通じて、周りの人々のあなたへの接し方は、過去においてあなたがしてきた接し方に帰していると気づくでしょう。前に身体を傾け縮ませるということは、あなたが未来へと身軽に前向きに自分を解き放つために過去の現象を浮きださせ浄化する機会を与えてくれているのです。 -Sharon Gannon
日本語訳 Yoshi